吹き出物センター
◇KTk大学でやりたいのは、グローバルなスタンダードで考え、知識もあり、技能もあり、医の心もあるお医者さんを一人でも多く育てようということです。
そういったお医者さんをどんどんつくらないといけない。
◇Yそれが理想ですね。
ぜひ実現していただきたいと思います。
◇Kアメリカ式の医学教育のスタイルでやるよというのもそうなんです。
Tk大学は5年生が毎年10人ぐらいアメリカに3〜6カ月行って臨床教育を受けています。
教授の先生もK大出身の人が多いんですが、アメリカで臨床トレーニングを受けている人が多いんです。
だから「やろう」と言うと「やりましょう」という反応のよさがある。
でもそれだけでは十分ではないから、アメリカからしょっちゅう臨床の先生を呼んできて、毎日回診させたりする。
先週も1週間やりました。
そうすると、アメリカの臨床教育のやり方、考え方はどうなのかがみんなわかってくる。
日本の若い人はポテンシャルがすごくある。
その若い人にグローバルなスタンダードはどんなところにあるのかをたくさん見せることが大事なんです。
たとえば、子供にピアノを教えたいということでピアノの先生のところに行かせます。
ところが生徒はその先生が教えるレベルより上には絶対行けないんです。
その先生が教えたとおりバイエルからソナチネにはいくでしょう。
でも、ベルリンとかザルツブルグに若いときに行かせて、世界のレベルはこうだと見せれば、これが世界一流なのか、あれがゴールなのかとわかる。
若いうちに一流の人をたくさん見せるべきです。
自分にとっての先生はあそこなんだと見せ、それぞれに自分自身の目標とするゴールを見せてあげることが大事です。
だから医学教育でもアメリカでチーフ・レジデントをやったような連中を呼んでいるんです。
◇Y骨董屋に働きに行かせると、まず最初は一流のものしか見せない。
一流のものを見せておけば、にせものを見たときにその違いがすぐわかる。
◇N要するに、目標をグレードアップさせる。
◇Kそれをしないと、外を知らないからうちの教授が一番だと思ってしまう。
◇N教授自身もそう思っている。
◇Kそれがまずいんです。
だからしょっちゅう外から呼んできてたくさん見せるんです。
この教育トレーニングの方法は3年前からT大でもやったんです。
T大とHb大学の医学部の学生を向こうからもこっちからも6人ぐらい出して、Hb大学の先生を2人呼んで、向こうの教材を持ってこさせて両方の学生を混ぜて1週間やったんです。
そうしたら学生の目が輝いてきました。
そのT大の学生6人を次にボストンに行かせてまた一緒にやらせた。
このコースを受けた人は「勉強が楽しくてしようがない」と必ず言い出す。
自分で勉強しないとダメなんです。
Hb大学のほうでも今年は6人のところに40人の希望者があった。
だから向こうでもすごい評判になっているんです。
◇Y向こうにとってはどういうメリットがあるんですか。
◇K来た学生全部にレポートを書かせて、一冊の本にして毎年まとめています。
1年目に来た一人が2年目にもう一回来たので、これはいいなと思って「どうだ」と聞いたら、「違うところに来てすごく楽しいし、勉強になる」と言っていました。
◇Yそれを今度、Tk大学でおやりになろうと。
◇KいまT大とも一緒にやろうかと思っているんです。
しかし、T大はどう反応しますかね。
◇NHb大学は名前は知られていますが、あちこちに散らばっているので、本当に寺子屋なんです。
Tk大学に来たらびっくりすると思いますよ。
カルチャーショックで(笑)。
◇Kポテンシャルがある若いときに世界の一流のいろいろなスタンダードを見せるのは非常に大事です。
◇YA先生が毎年やっておられるサマー・スチューデントのプログラムもそういう意図があるわけですね。
◇Aそうです。
◇Y昨夏、パルアルトでサマー・スチューデントの集まりがあって、私もご一緒させていただきました。
そのときにパーティーがあって学生さんたちと話をしたんですが、「この夏、こちらのバイオベンチャーで仕事をしてみて、医者だけで終わるつもりがなくなった」と言うんです。
広い世界を見たからなんですね。
「本当に医者だけで人生終わっていいのかな」という疑問を抱いただけでも非常に価値がありますね。
◇Kくどいようですが、若いうちに広い世界を見せることです。
◇AT大的な価値観ではないものをやる。
そこに意味があるわけです。
◇K私はT大の医学部にいたときに、バドミントン部の部長をしました。
そのときに、コーチのご助力で、世界のトップクラスの選手が出るYx・ジャパン・オープンでうちのバドミントン部の学生を下働きさせたんです。
これも同じ発想からです。
自分ができてもできなくても、世界のトップクラスはこうだというのを見せるんです。
医学は、特に臨床の教え方とか、ティーチングは村社会ではできないんです。
◇N要するに臨床実習。
◇Kイギリスは、アメリカは、カナダは、どうやって教えるのか。
どうやって診るのか。
考えるのか。
みんなぶっつけ本番で回診をやらせるんですが、すごくいいです。
◇A私がAjホールの次にT大医科学研究所で進めているのは、共通のオープンラボラトリーです。
K先生の遺伝子工学ラボにも通じるものがあります。
たとえば科学技術振興事業団と協力して、戦略的基礎研究事業のグラント(CREST)を基礎に建物を建てています。
いままでは実験スペースだけでしたが、より柔軟に民間の協力を得て、外国の客員教授や企業からゲストが来たときに滞在できるオフィスやコンファレンスルームをつくっています。
事務側の積極的な協力で事業団と連携した1億円ほどでオープン・ラボができました。
その次には、プレハブだと土地利用の効率が悪いので、5000平方メートルぐらいのものをつくりたいと考えています。
コンクリートだと1平方メートルが30万円で1000平方メートルだと3億円、5フロアつくると約15億円になります。
この建物には入り口が2つあります。
一方がインダストリアル・エントランスで、一方がアカデミック・エントランス。
中は区切りがなく、どのようにも仕切れるようにしておく。
そして建物のオーナーシップは企業が持ち、維持費を負担してもらう。
文部省に聞くと、この方式でもよいそうです。
その企業がつぶれたらどうするという議論もあるようですが、まず踏み出して、とにかく実践することを奨励しています。
こうして規制緩和でいろいろなことができるようになりました。
先日も文部省の特許調査会議で、学術国際局の人から「Ajホールはよい例ですね」と声をかけられました。
「では、企業とオーナーシップを共有できるものをつくったらどうですか」と言ったら、「ぜひやってください」という反応がありました。
このように文部省など省庁も大きく変わっています。
先ほどの5階建てで15億円ぐらいで企業が所有権を持つ建物は、「文部省でも考えてみます」ということです。
◇Yずいぶん変わりましたね。
◇Kだから、私立大学こそもっとそれをやるといい。
◇Aどんどんやればいいんですね。
むしろ大学人の自己規制のほうが問題だと思います。
